講師:水本邦彦 (京都府立大学文学部教授)
日時:2008年11月29日(土) 10:40~12:00
場所:成安造形大学 本部棟三階ホール
近江学研究所学外研究員として現在編集中であります研究紀要『近江学』創刊号にご執筆いただいています水本邦彦先生に、今回は「絵図にみる近江の宿場町」と題して、ご専門の立場で、近江の宿場について持論を語っていただきました。
前半は、近江の東海道における宿場町を浮世絵や名所図会を見ながら歩いてみようということで、スライドを見ながら解説をいただきました。三条大橋を渡る牛車や、60キロの米俵を背負った運輸業者、茶店でお酒を飲む旅人、大津絵を売る土産物屋、現在も建物が残っている薬屋の店先など、近世街道筋の風俗をわかりやすく解説いただきました。
後半は、最も規模の大きい宿場町である大津を取り上げ、寛保年間の絵地図を見ながら、当時の大津の都市機能を解説いただきました。現在の大津は北を上に地図を描くので、琵琶湖が上に描かれるが、江戸時代の大津は下に琵琶湖を描き、京都方面を上に設定し、町名が立てに書かれている。これはおそらく大津の入口は琵琶湖であり、逢坂山に向かった視点が強く意識の中にあったと想像される。また、膳所方面から三井寺に向かう東西の視点があり、東海道を京都に向かうベクトルが働き、町名が三井寺を上にして縦に書かれている。など、絵地図の特徴を指摘され、江戸時代の大津は琵琶湖から京都へという北から南の流れと、膳所から三井寺へという東から西の流れの交差点であるということができ、現在の感覚とは大きく違うことが絵図によってわかるという研究の一端をご報告いただきました。